浸透探傷試験(PT)とは?原理・手順・探傷剤の種類までわかりやすく解説
溶接部や配管の表面に、細かいひび割れが入っていないか確かめたい。そんなとき候補に挙がるのが浸透探傷試験(PT)です。名前は聞いたことがあっても、どんなきずが分かるのか、どんな流れで検査するのかまではイメージしづらいのではないでしょうか。この記事では、浸透探傷試験の原理と手順、探傷剤の種類、検出できるきずや適用範囲、磁粉探傷試験など他の手法との使い分けまで、仙台のさくら株式会社が順を追って説明します。検査を依頼する前の基礎知識として役立てていただければ幸いです。
■浸透探傷試験(PT)とは?表面のきずを見つける非破壊検査
浸透探傷試験(PT)とは、部品や配管の表面に開いたきずを、浸透液という液体を使って目に見える形にして探し出す非破壊検査の一種です。PTは英語の「Penetrant Testing」の略で、「浸透探傷検査」「浸透探傷法」と呼ばれることもあります。対象物を壊さず、削らずに、表面のきずの有無や位置・長さを確認できるのが特徴です。
ここでいう「表面に開いたきず」とは、表面から内部に向かって口を開けている割れやピンホールのこと。金属だけでなく、樹脂やセラミックスなど、液体を吸い込まない材質であれば幅広く適用できます。特別な電源や大がかりな装置を必要としないため、工場内はもちろん、屋外の現場でも実施しやすい方法として、さまざまな業界で使われてきました。当社でも、配管や溶接部の品質確認の一つとしてこの検査を活用しています。
■浸透探傷試験の原理|浸透液がきずに入り込む仕組み
浸透探傷試験の原理は、「毛細管現象」という身近な物理現象を利用しています。細いすき間に液体が自然に吸い込まれていく働きのことで、狭い管の中を水が上がっていく現象と同じ仕組みです。表面に開いたきずは、この細いすき間そのものです。そこへ浸透しやすい液体を塗ると、液が自然にきずの内部へ入り込みます。
いったん入り込んだ浸透液は、表面から拭き取ります。すると、きずの奥に残った液だけが残る状態になるのです。その上に現像剤という白い粉末状の薬剤を塗ると、きずの中に残っていた液が吸い出され、表面に染み出して模様を描きます。もとのきずは肉眼では見えないほど細くても、染み出した液が広がることで幅を持った線や点として現れ、目で確認できる大きさになります。この「見えなかったきずを見える大きさに拡大して映し出す」点が、浸透探傷試験の核心です。
■浸透探傷試験の手順|前処理から観察までの流れ
浸透探傷試験は、決められた手順を順番に踏むことで、きずを確実に浮かび上がらせます。工程の一つひとつに意味があり、途中を省いたり乾燥時間を守らなかったり
前処理(表面の清掃)
まず、検査する面の油分・サビ・塗膜・汚れを取り除きます。表面が汚れていると、浸透液がきずに入り込むのを妨げたり、汚れそのものがきずのように見えたりするためです。溶剤で拭き取る、洗浄するなどして、清潔で乾いた状態に整えましょう。この前処理の丁寧さが、検査精度を大きく左右する工程です。
浸透処理
清掃した面に浸透液を塗布し、一定時間そのまま置きます。この待ち時間に、毛細管現象で液がきずの奥まで入り込んでいきます。放置する時間は液の種類や対象物の温度によって変わり、短すぎると奥まで届かず、見落としの原因になりかねません。
除去処理(余分な液の拭き取り)
表面に残った余分な浸透液を取り除きます。きずの中に入った液は残し、平らな面についた液だけを落とすのがポイントです。ここで拭き取りが甘いと表面に液が残って背景が汚れ、逆に強く洗いすぎるときずの中の液まで抜けてしまいます。液の種類に応じて、水で洗う、溶剤で拭き取るといった方法を使い分けましょう。
現像処理
白い現像剤を薄く塗布します。現像剤がきずの中の液を吸い出し、表面に染み出させることで、きずが色や光の模様となって現れるのです。染み出しには少し時間がかかるため、決められた現像時間を待ってから観察に移りましょう。
観察・後処理
現れた模様を観察し、きずの有無・位置・長さを記録します。染色タイプなら白い背景に浮かぶ色の線を目視で、蛍光タイプなら暗い場所で紫外線を当てて光る模様を確認しましょう。観察が終わったら、検査に使った薬剤を洗い流す後処理を行い、対象物をもとの状態に戻します。
■浸透探傷試験の探傷剤(浸透液)の種類と特徴
浸透探傷試験の精度は、使用する探傷剤(浸透液)の選び方に大きく関わります。探傷剤は「きずをどう見せるか」と「余分な液をどう落とすか」の2つの観点で分類されます。対象物の材質や表面の状態、検査する場所の環境に合わせて選ぶとよいでしょう。
見せ方による分類:染色浸透探傷と蛍光浸透探傷
1つ目は、きずの見せ方による分類です。染色浸透探傷(カラーチェックと呼ばれます)は、赤色の浸透液を使い、白い現像剤の上に赤い模様として浮かび上がらせる方法です。特別な照明が不要で、明るい現場でそのまま目視できる手軽さがあります。もう一方の蛍光浸透探傷(ケイコーチェックと呼ばれます)は、紫外線を当てると光る浸透液を使う方法です。暗い場所で紫外線ランプを当てると、きずが鮮やかに発光して見えるため、微細なきずも見つけやすいのが特長です。一般に、感度を重視する場面では蛍光タイプ、手軽さや現場条件を重視する場面では染色タイプが選ばれます。
洗い方による分類:水洗性・溶剤除去性・後乳化性
2つ目は、除去処理での余分な液の落とし方による分類です。水洗性浸透液は、そのまま水で洗い流せるタイプで、大きな部品や多数の部品をまとめて扱う場面に向いています。溶剤除去性浸透液は、専用の溶剤を含ませた布で拭き取るタイプで、水を使いにくい現場や部分的な検査に適しているでしょう。後乳化性浸透液は、拭き取りの前に乳化剤を加えてから水で洗うタイプで、感度を高めたいときに用いられます。どのタイプが適するかは、部品の大きさ・数量・検査する場所の設備によって変わってきます。
■浸透探傷試験で検出できるきずと適用範囲
浸透探傷試験には得意なことと不得意なことがあり、その線引きを理解しておくと、検査の依頼や結果の読み取りがスムーズになります。まず押さえたいのは、「表面に開いているきずしか検出できない」という点です。
検出できるのは、割れ(クラック)、微小な穴(ピンホール)、重なり合った欠陥(オーバーラップ)など、表面から内部に向かって口を開けているきずです。浸透液が入り込める開口部があることが条件になります。逆に、表面の下に隠れた内部のきずや、表面が完全に閉じてしまっているきずは、液が入り込めないため検出できません。内部の欠陥を調べたい場合は、超音波探傷試験(UT)や放射線透過試験(RT)といった別の手法の出番になります。
適用できる材質は幅広く、鉄鋼などの金属はもちろん、アルミやステンレス、樹脂、セラミックスなど、液体を吸い込まない素材であれば対象になります。溶接部の割れ確認、配管や継手の表面点検、鋳造品や機械部品の検査など、活躍する場面は実に多岐にわたるでしょう。当社では、プラント配管や溶接部の品質を確かめる工程で、対象や目的に応じてこの検査を選択しています。
■浸透探傷試験と磁粉探傷試験(MT)など他の非破壊検査との使い分け
表面のきずを探す非破壊検査には、浸透探傷試験のほかに磁粉探傷試験(MT)があります。どちらも表面近くのきずを対象にしますが、原理も適用できる材質も異なるため、目的に合わせた使い分けが必要です。
磁粉探傷試験は、対象物を磁化して、きずの部分に生じる磁力の乱れを鉄の粉で見つける方法です。磁石につく材質(鉄など)にしか使えない一方、表面のすぐ下に隠れたきずもある程度とらえられる強みがあります。これに対して浸透探傷試験は、磁石につかないアルミ・ステンレス・樹脂などにも使える代わりに、対象は表面に開いたきずに限られます。そのため、ステンレスやアルミの表面割れを調べたいときは浸透探傷試験、鉄鋼で表面のすぐ下まで含めて確認したいときは磁粉探傷試験、というように選び分けるのが基本です。
さらに、内部のきずには超音波探傷試験(UT)や放射線透過試験(RT)が用いられます。一つの手法で全てをカバーできるわけではなく、調べたいきずが表面か内部か、材質は何かによって最適な方法が変わります。どの検査が適しているか判断に迷う場合は、当社が検査の目的をうかがったうえでご提案します。配管に関わる資格について詳しくはこちら(https://www.sakura2012.co.jp/column/193)もあわせてご覧ください。
■浸透探傷試験のメリットと注意点
浸透探傷試験を選ぶ際は、長所と短所の両方を知っておくと、他の手法との比較がしやすくなります。まず長所からみていきましょう。
メリットとして大きいのは、大がかりな装置や電源がなくても実施でき、屋外の現場でも扱いやすい点です。金属以外の材質にも幅広く使え、複雑な形状の部品でも、液を塗れる面であれば検査できます。きずの位置や長さが模様として目に見えるため、結果を直感的に把握しやすいのも利点です。
一方で注意点もあります。検出できるのは表面に開いたきずに限られ、内部の欠陥は分かりません。また、前処理での清掃や、浸透・現像の待ち時間といった各工程を丁寧に守らないと、きずを見落とす可能性があります。表面が塗装されていたり、目詰まりしていたりすると正しく検査できないため、対象物の状態を整えることも欠かせません。こうした特性を踏まえ、検査の目的に本当に合っているかを見極めることが、確かな品質確認への近道といえるでしょう。
■よくある質問
浸透探傷試験(PT)と磁粉探傷試験(MT)はどちらを選べばよいですか?
調べたい対象の材質と、きずの位置で選びます。アルミやステンレス、樹脂など磁石につかない材質の表面割れには浸透探傷試験が適しています。鉄鋼で表面のすぐ下のきずまで確認したい場合は磁粉探傷試験が向いています。判断が難しいときは、対象物と目的をお知らせいただければ当社よりご提案します。
塗装された配管でも浸透探傷試験はできますか?
そのままでは難しいことが多いです。塗膜が表面のきずをふさいでしまい、浸透液が入り込めないためです。検査する部分の塗装を落として、清潔で乾いた面に整える前処理が前提となります。塗装の扱いを含めて、事前にご相談いただければ流れをご案内します。
検査にかかる時間や費用の目安はどのくらいですか?
対象物の大きさ・数量・形状、使用する探傷剤の種類や検査する場所の条件によって幅があるため、一律にはお答えできません。おおよその見込みは、現場の状況をうかがったうえでお見積りとしてご提示します。当社は見積りを無料で承っていますので、まずはお気軽にお問い合わせください。
■仙台で配管・溶接部の非破壊検査をお考えならさくら株式会社へ
浸透探傷試験は、表面に開いたきずを目に見える形にして確かめる、身近で扱いやすい非破壊検査です。ただし、検出できるきずの範囲や前処理の丁寧さによって結果が変わるため、目的に合った方法選びが品質確認の鍵になります。さくら株式会社は宮城県仙台市を拠点に、プラント配管工事からレントゲン(X線)検査を含む非破壊検査まで一貫して対応しています。どの検査が適しているかの相談から見積りまで承りますので、配管や溶接部の検査でお困りの際は、どうぞお気軽にご相談ください。
