非破壊検査とは?|種類・メリット・活用分野まで徹底解説
■非破壊検査とは?
非破壊検査とは、対象物を破壊することなく、その品質や構造を評価するための検査方法です。
この検査は、製造業や建設業、航空業などさまざまな分野で広く利用されています。非破壊検査を用いることで、製品や構造物の内部状態を確認し、欠陥を発見することができますが、検査自体は対象物にダメージを与えません。
非破壊検査の大きな特徴は、対象物を使用し続けることができる点です。
例えば、鉄道や飛行機の部品、橋梁などのインフラ設備に使用され、定期的に検査することで安全性を確保し、事故の予防につながります。
このように、非破壊検査は、設備の安全性を確保し、維持管理コストを削減するために欠かせない技術となっています。
■破壊検査との違いと非破壊検査の役割
破壊検査との違い
破壊検査では対象物を壊して、その内部や性能を確認します。例えば、材料の強度を測るために引っ張り試験をなどを実施して破損した状態を観察します。
これに対して、非破壊検査では、対象物を壊さずに材料の内部構造や欠陥を検出することができるので継続的な安全確認や品質管理が求められる分野で特に有効です。
非破壊検査の役割
非破壊検査は、単に欠陥を発見するための方法にとどまらず、様々な役割を果たします。
- 【安全性の確保】
非破壊検査は、事故を防ぐために特に重要な分野で使用されます。鉄道のレールや航空機の部品、発電所の設備などでは、定期的に検査を行い、見えないリスクを早期に発見することで、重大な事故を未然に防ぎます。例えば、飛行機の翼やエンジンに小さな亀裂があった場合でも、事故が起こる前に検出できるため、安全を確保することができます。 - 【品質管理と維持管理】
製造業や建設業では、品質管理が非常に重要です。非破壊検査を使うことで、完成品の品質を確保し、製造途中での問題を発見できます。例えば、自動車部品や電子機器など、品質が求められる製品では、完成品を検査することで、設計基準を満たしているかどうかを確認できます。 - 【コストの削減】
定期的な非破壊検査によって、設備や機器の不具合を直ぐに発見することができ、大規模な修理や交換を避けることができます。特に高額な設備では、検査による早期発見が、後々の大規模な修理費用や交換費用の削減につながります。また、無駄な稼働時間やダウンタイムを減少させることで、全体の運用コストを抑えることができます。 - 【長寿命化のサポート】
非破壊検査は、機器や構造物が長く使えるようにするための定期的なメンテナンスにも重要です。定期的な検査で問題を早期に発見することで、設備の寿命を最大限に延ばせます。これにより、突然の故障や停止を防ぎ、事業の運営がスムーズに進みます。
■非破壊検査の主な方法と技術
放射線透過試験(RT)
放射線透過試験は、放射線を対象物に照射し、物質を通過した放射線の強度を測定することで内部の欠陥や不均一性を検出する方法です。放射線が通過しやすい場所と通過しにくい場所を比較することで、材料内部の密度や構造の違いを明らかにします。
- 使用例:鋼材や溶接部の内部欠陥の検出
- 特徴:金属や厚い材料に対して非常に有効ですが、放射線を使用するため、取り扱いには注意が必要です。専用の防護装置が必要であり、検査後の画像診断が行われます。
超音波探傷試験(UT)
超音波探傷試験は、超音波を対象物に送信し、反射波を受信することで、内部の亀裂や欠陥を検出する方法です。音波の反射時間を測定し、反射波の変化を解析することで、材料内部の異常を発見します。
- 使用例:圧力容器やパイプライン、溶接部の検査
- 特徴:高精度で、厚い材料でも適用可能です。リアルタイムで検査ができ、測定結果を即座に確認できますが、表面の状態や角度に影響されることがあります。
浸透探傷試験(PT)
浸透探傷試験は、対象物の表面に液体の浸透剤を塗布し、その後洗浄して、残った浸透剤が欠陥のある部分に集まることで表面の亀裂や欠陥を検出する方法です。非常に微細な亀裂でも検出することができます。
- 使用例:鋳物や溶接部、金属表面の亀裂の検出
- 特徴:表面の微細な欠陥を検出するのに適しており、検査が簡単でコストも低いですが、主に表面の欠陥に対応する方法です。
磁粉探傷試験(MT)
磁粉探傷試験は、磁気を使って対象物の表面や近表面の亀裂を検出する方法です。対象物に磁場をかけ、磁粉を散布すると、亀裂のある部分で磁場が乱れ、その部分に磁粉が集まるため、亀裂の位置を確認することができます。
- 使用例:鉄鋼製品や金属構造物の表面欠陥の検出
- 特徴:鉄や鋼に非常に有効で、表面の割れや不整合を視覚的に確認できます。簡単で迅速な検査が可能ですが、非磁性の材料には適用できません。
渦流探傷試験(ET)
渦流探傷試験は、対象物に電流を流し、その電流によって生成される渦電流の変化を利用して、材料の内部状態を調べる方法です。渦電流が材料の欠陥や不均一性に反応するため、それらを検出することができます。
- 使用例:航空機のアルミニウム部品、配管や金属表面の欠陥検出
- 特徴:導電性のある材料に対して有効で、金属表面の腐食や亀裂を検出するのに適しています。表面に近い欠陥を特定することができ、高速かつ精密な検査が可能です。
■非破壊検査のメリットとデメリット
メリット
- 【対象物を損傷しない】
非破壊検査の最大のメリットは、対象物を壊さずに検査できることです。これにより、製品や設備の使用中にも定期的に検査を行い、性能や安全性を確保することができます。
- 早期発見による安全性の向上
非破壊検査を定期的に行うことで、欠陥を早期に発見し、大きな事故や故障を未然に防ぐことができます。
- 【コスト削減】
定期的な非破壊検査を行うことで、重大な欠陥が発生する前に問題を発見でき、修理や交換の費用を抑えることができます。
- 【非接触・リアルタイム検査が可能】
一部の非破壊検査方法(例えば、超音波探傷試験や渦流探傷試験)は、非接触でリアルタイムに検査を行うことができます。これにより、迅速に検査が進み、作業効率が向上します。また、現場で検査を行った後、すぐに結果を確認できるため、迅速な対応が可能です。
- 【多様な用途】
非破壊検査は、さまざまな材料や構造に対応可能で、金属、プラスチック、複合材料、コンクリートなど、広範囲な素材に対して利用できます。この多様性により、製造業、建設業、航空業、エネルギー分野など、さまざまな業界で役立っています。
デメリット
- 【高コストな場合がある】
非破壊検査は、使用する技術や機器によっては高額な費用がかかる場合があります。特に、放射線透過試験(RT)や高精度な検査機器を使用する場合、機器の導入費用や運用費用が高くなることがあります。そのため、検査のコスト対効果を慎重に評価する必要があります。
- 【検査対象物の準備が必要】
一部の非破壊検査方法では、検査対象物に特定の準備が必要です。例えば、対象物の表面を清掃することが必要な場合や、特殊な環境条件(温度や湿度)を満たさなければならない場合があります。これにより、準備に時間や手間がかかることがあります。
- 【深部の欠陥の検出が難しい場合がある】
非破壊検査の中には、対象物の表面付近の欠陥を主に検出するものもあります。例えば、磁粉探傷試験(MT)や浸透探傷試験(PT)は、主に表面の亀裂や欠陥を検出するため、深部にある欠陥を見逃すことがあります。このため、欠陥の種類や位置に応じて、適切な検査方法を選ぶ必要があります。
- 【熟練した技術者が必要】
非破壊検査を行うには、熟練した技術者が必要です。検査機器の操作や結果の判断を誤ると、正確な検査ができず、誤った結論に至る可能性があります。そのため、技術者のトレーニングや資格取得が重要であり、適切なスタッフの確保が求められます。
- 【一部の方法は物理的制約がある】
非破壊検査方法の中には、特定の材料や形状に制限があるものもあります。例えば、渦流探傷試験(ET)は、導電性のある材料にしか適用できませんし、放射線透過試験(RT)は厚い材料に対しては効果的ですが、薄い部品では検出が難しい場合があります。このため、対象物の特性を理解した上で、最適な検査方法を選定する必要があります。
■非破壊検査が活用する事例
非破壊検査はさまざまな業界で活用され、安全性や品質管理に欠かせない役割を果たしています。
- 【航空業界】
航空機の安全性を守るため、超音波探傷試験(UT)や放射線透過試験(RT)が使用され、エンジンや機体の亀裂や腐食を早期に発見します。
- 【鉄道業界】
鉄道のレールや車両部品の点検には磁粉探傷試験(MT)や超音波探傷試験(UT)を使い、表面や内部の欠陥を検出します。
- 【建設業界】
橋梁やビルなどのインフラの検査で、放射線透過試験(RT)や超音波探傷試験(UT)を使って、内部の欠陥や劣化をチェックします。
- 【製造業】
溶接部や鋳造品の品質管理では、浸透探傷試験(PT)や超音波探傷試験(UT)が使われ、欠陥を発見して製品の品質を保ちます。
- 【石油・ガス業界】
パイプラインや貯蔵タンクの検査では、渦流探傷試験(ET)や超音波探傷試験(UT)を用い、腐食や亀裂を発見し、漏れや事故を防ぎます。
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